ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ
グリュミオー(アルテュール),ヘンデル,ベイロン=ラクロワ(ロベール)

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ヘンデル ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 HWV371(作品1-13)


ブラームスに続き、またもヴァイオリン・ソナタについて書いてみよう。
ヘンデルのヴァイオリン・ソナタの中で最も傑作と言われているのが、このニ長調のソナタだ。
まず、この作品1のソナタ群の中には、本当にヴァイオリンのためのソナタかどうか怪しいものもある。
さらに、ヘンデルのヴァイオリン・ソナタとして演奏されているものの中にも、本当にヘンデルが作ったものかどうか怪しいものもある。
と、このように怪しいだらけの作品が沢山あるのだが、こちらの曲は、ヘンデルの曲でありかつヴァイオリンのための曲というのが、割とはっきりしていると言える。
学者たちの努力によって、様々な角度からそう断言される訳だが、まあ聴く方としてはどうでもいいと思う人もいるし(僕のことだが)、何よりこの曲が持つふんだんな美しさによって、「これぞヘンデルの傑作ヴァイオリン・ソナタだ!」思わず納得してしまう。
それほど弦楽器が奏でる音楽の魅力を引き出すことにこの曲は成功しているのだ。
グリュミオーの演奏を聴いてもらいたい。納得するはずである。


緩-急-緩-急と4つの楽章で構成されている。
1楽章はAffettuoso、愛情を込めてという意味だが、愛情を込めずに演奏出来ようかという程、優雅で伸びやかでしなやかな旋律に魅了される。この一点の陰りも無い美しさには、ヘンデルの晩年の作とされるのも肯ける、深い慈愛さえも感じる。
2楽章のAllegroはヴァイオリンと伴奏の掛け合いが楽しい。伴奏は普通はチェンバロである。チェンバロとヴァイオリンという組み合わせは、どんなことをやっても一気にバロック風になるという魔法の組み合わせだが、特にこの楽章では伴奏に止まらない鍵盤の楽しみにも触れられる。
一転して3楽章はLarghetto、ヴァイオリンがたっぷりと哀愁を帯びた旋律を歌う。目を閉じてじっくりと奏者の音色に耳を傾けたい。そして、時折顔を出すチェンバロの憂いある音列も忘れずに堪能しよう。
4楽章で再びAllegro、ヴァイオリンの紡ぐ途切れのない旋律は、天から与えられたような、無上の美がある。終わってしまうと、もうおしまいかと残念に思うくらい、美しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
10分ちょっとで終わってしまうのが実にさびしい。他のいくつかのヴァイオリン・ソナタと合わせて、じっくりと優雅な時間を過ごすのが、最高の聴き方だろう。
熱い紅茶でも飲みながらだと、相乗効果でどちらもより一層楽しめる。
僕はコーヒー好きで、毎日かなりの量のコーヒーを飲むが、ヘンデルだったら絶対に紅茶が良い。
バッハを聴くよりもずっとずっと、アフタヌーンティーの時間が愛おしくなること請け合いだ。